スペインの治安について

20,30年前のスペインは、バスク地方のテロ、マドリードやバルセロナでの強盗の多発などを理由に、日本の外務省の海外安全ホームページでも度々「危険地域」に定められたことがあるほど、確かに治安がとても悪かった国です。ですが観光立国を目指していたスペイン政府は、各自治政府にも長年治安の改善の要請し続け、さらにはバスク地方のテログループ完全解散宣言も手伝って、随分と安全な国へと成長してきたと言えます。

とはいえ、完全に強盗、窃盗、置き引きなどの被害がなくなったわけではありません。特に置き忘れた財布やかばんが交番にそっくりそのまま届けられたり、置き忘れた場所に放置されたままであるような国で生活をしている日本人観光客は、「身の回り、手荷物の管理が生ぬるい,、危険を察知する感度も低い」ということをはっきり自覚しておいたほうが良いでしょう。加わって、慣れない外国の土地や道。荷物以外にも注意をしていなくてはいけないことが日常よりもずっと多い状況です。

現在の邦人被害状況

在マドリード日本大使館在バルセロナ日本領事館は毎月「主な邦人被害状況」というレポートを発行しています。私も毎月そのレポートを確認しています。確かにひと昔(20~30年前)に比べて減ったものの、相変わらず似たような手口ですりや置き引き被害に遭われている日本人が大勢いらっしゃいます。2018年の11月の前半2週間には、バルセロナだけで20名の被害者報告がされています。少ないですか?多いですか?盗む人は「プロの窃盗集団」です。自分は絶対に大丈夫、と思っていても、ふっとしたすきにやられてしまうようですから、注意しすぎるに越したことはありません。

どんな手口が常套手段とされているのかは、在マドリード日本大使館のオフィシャルページ上の「安全情報 - 主要な犯罪の手口及び防犯対策」をご確認ください。現地事情を事前に把握しておくことも大切ですが、被害にあってしまうイメージをす植えつけてしまうのも逆効果。事実を把握した上で、こういった状況を呼び込まないためにはどういったメンタリティーで、どのように身辺の管理を行うべきなのかのメンタルトレーニング、シュミレーションをしておくとかなり役に立つはずです。

狙われない為のメンタリティー

私は20年以上、治安の悪い時代からマドリードに暮らしています。当時はマドリードの中心地は本当に治安が悪くて、ナイフを持った強盗や首絞め強盗はなども今よりずっと多発していましたし、観光客狙いではなくてもローカルの若者同士のナイフや凶器を使った喧嘩なども頻発しており、時間帯、場所、通りによっては「絶対に一人で歩かない」場所を自分なりに把握してそれを必ず守っていました。今でこそガイドブックなどにも「おしゃれな地区」というイメージで紹介されているマドリードのフエンカラル通り。ここは私も地元の人も「危ない通り」という共通認識をもっていた道なんです。今ではそういった若者同士や麻薬中毒者同士の小競り合いなどが原因の内情は、少なくとも市内中心部から排除され、警備員、警官の数も増え、歩くのが怖い場所というのは皆無になったと言えます。ただし、それは普通にしていて被害に遭わないということを意味しているわけではありません。被害にあうのは何も観光客、日本人だけではありません。地元の人だってちょっとしたすきを見せると標的にされてしまうのです。

どんな時、どんな人が被害に遭いやすい?

大きな荷物を2つ以上持ちながら、切符を買おうとしたり、人の多い出入り口の地下鉄、電車の改札口を通ろうとしていたり…つまり、荷物以外に気をとられる外的要因がある時に人はすきを作ってしまうものです。

私の個人的な体験も、スペイン人の友人からの体験談も、被害に遭われた日本人観光客の方の多くが似たような状況で被害にあっているのです。私の場合も地下鉄の改札口を大きな荷物を両手に抱えて出ようとしていた時に、前後を二人組みのすりに挟まれて、一つの荷物が重たいなと思ったらすでに手が鞄の中に入っていた瞬間でした。こういった状況では荷物は自分より先に改札を通すことが先決です。この時の私はうっかりとしていて、大きいほうの荷物が背中側に回っていたのです。私個人のスペイン人の友人も同じような状況にアトーチャ駅で遭いました。私達の場合幸いにも気がついた時点で大声を出すことができたので、未遂で終わりましたが、もともと日常で大声を出すことさえ少ない日本人でしたら、とっさに声が出ない、ということも容易に想像がつきます。

また、不思議というか、納得してしまうというのか、こちらに長い間暮らしている日本人であっても、やられる人は何度もやられています。なぜでしょう?それはやはり周囲への気配りが足りない、の一言に尽きます。おっとりしている人、比較的ぼぉっとしている人が典型的な狙われるタイプです。

建物の外に出る時
建物の中に入る時
道で鞄を開ける時
どこかで地図を広げる時
お会計をする時
ホテルや空港のカウンターで手続きをする時
駅で券売機を利用する時
荷物を一旦足元に置く時
カフェやバルに座る時
お手洗いに立つ時 など。

要は、これまでしていた行動から別の行動パターンを取るその時に周囲に目をやっているかどうか。その一瞬に注意を払うことこそがプロのすりに対しても「私もすりさんを見張っていますよ。」という信号を送っていることになるのです。

盗難に遭わない旅行を楽しんで頂くために、どうぞ怠らずに小さな信号をだし続けてくださいね。1,2日もやっていれば無意識に行っているようになっているはずです。

ちょっとしたすきを作らないためのコツ

安全対策として私がアドバイスをするとすれば、できないことを頼りにするのではなく、「すきを作らない」「危険な状況を呼び込まない為の信号を送る」、この2点に限ります。(貴重品やパスポートの管理は原則鉄則として別々にしておくことなどについては皆さんそれぞれ対処法があるでしょうからここでは触れません。)

前述の「安全情報 -手口及び防犯対策」のページには具体的な対策が明記されていますので参考にしてみてください。そして私がマドリードで生活をするに当たり注意していることも以下に挙げておきますのであわせてご参考ください。

  • 大金の現金は持ち歩かない。(クレジットカード社会です。地下鉄、列車の乗車券は基本カードで購入できます。商店レストランは、最低消費金額-5~10€前後以上ならカードでの支払いが可能です。医療機関でのクレジットカードでの医療費の支払いが可能です。)
  • リュックサックでは出かけない。やむを得ずリュックサックで出かける場合でかつ公共交通機関を利用する場合は、リュックは必ず体の前に背負う。至近距離で人が近づいてきても仕方がないような状況-改札やエレベーター内、エスカレーター上では絶対に背中には背負いません。
  • リュックは、背中に当たる部分にポケットがあるタイプのものを選び、財布や携帯電話など重要なものはそのポケットにしまう。
  • 地下鉄に乗る場合、空いている席があれば座る。これはやはり治安上自分の身の回りの手荷物に極力人を近づけない為です。座れない場合は、開閉するドアとは反対側のドア側に立つ。そこが無理なら出入り口付近ではなく、座席の前の通路に立つ。このあたりは周囲の目もあるので、比較的すりの手が伸びにくい場所です。ただし。絶対に伸びないわけではないので、油断大敵です。
  • レストラン、カフェ、バルで荷物は空席の上に置かない。自分が座っている座席の下にも置かない。膝の上に置きましょう。どうしても食べにくい・・・という場合は、自分の目の行き届くすぐ横の座席に置くこともありますが、その場合は、荷物の上から上着を掛けたり、バッグの紐を座席に絡ませたりします。
  • 携帯電話や貴重品はテーブルの上には絶対に置かない。
  • 公園のベンチや通りのベンチに座る場合は、背中に人が立てない様な位置にあるベンチを選んで座る。
  • エレベーターで男性と二人っきりで乗りあうよう状況になれば、そのエレベーターには乗らない。
  • 大通りからわき道に入る場合は、必ず前後の人通りを確認しながら入る。極端に人通りが少ない場合は遠回りでも別の通りを歩く。
  • 平日の就学時間帯であるにも関わらず、町をぶらぶらしている小学生、中学生低学年ぐらいの子供の集団に出会ったら出来るだけ避ける。残念ですが、こういった子供の集団はあまりよい行いをしていないということが多いのが事実です。この国はとても過保護な国です。小学生の子供だけで、大人の同伴無しで子供だけで町をぶらぶらしているということなどまず普通のスペイン人家庭であれば、言語道断の行いです。よほど治安のよい地方の町や、逆に無責任な保護者が多いような治安の悪い地区などでは見られるかも知れませんが、マドリードやバルセロナのような都会ではありえません。
  • 通りの真ん中で地図を広げない。ガイドブックを広げない。どうしても確認したい場合は、建物を背中にくっつけるようにして立つようにする。
  • 知らない人に突然声を掛けられたら、ジェスチャーでノーと答えてすぐにその場を離れる。スペイン語の分かる私でも、ぶしつけな質問の仕方やトーンで話しかけてくる人には対応しません。それで問題ないのです。興味のないことや人に対してむやみやたらに礼儀正しく対応する必要はありません。こちらが理解していないにも関わらずやたらと親切に近づき話続けてくる人や、急激に至近距離を縮めてくる人には要注意です。こうゆう時、あなたの”野生の直感”は”おかしい、あやしい、今すぐ離れろ”と言っているはずです。「おかしいと思ったんですけれど・・・」という後の祭りにならないよう、直感を信じてすぐに離れてください。
  • 道路を歩く場合、かばんは車道と反対側に持つ。かばんを持つときはファスナーは必ず体の前から後ろに向かって開くようにかばんを掛ける。歩いている時はかばんの取っ手やファスナーを抑えながら歩く。

小さな心がけを意識・無意識に行っていれば、おのずと「私は自分の荷物をしっかり見張っていますよ。」というオーラーが出てくるのです。無意識のうちに警戒モードに入っているので、すきも見せにくくなっているので、危険な状況を呼び込みにくくしています。

スペイン語で 「Mas vale prevenir que curar (治すより予防せよ)」ということわざがあります。

被害にあって泣きを見る前に、被害に遭わないように意識・無意識の注意を高めて安全で楽しい旅行をしていただきたいものですね。

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